2010年5月11日火曜日

『千の風になって』という歌が私たちに届くまでの話・第8話

●ボルチモアへ
 細い糸でつながった街が,一つだけありました。ボルチモアです。マリーは,ジョンが亡くなる前に,何度かボルチモアの親戚の家をジョンと一緒に訪れたことがあったのです。「その親戚の家を頼ってボルチモアへ行こう」,マリーはそう考えました。
 安い給料をやりくりして,やっと旅費と少しのお金をためることができたマリーは,ある朝,誰にも見送られることもなく,一人ぼっちでボルチモアを目指しました。12歳の時のことでした。
 ボルチモアの遠い親戚の家にたどり着いたマリーでしたが,その家も貧しくしかもたくさんの子どもがいたので,一緒に住むことはできません。親戚の家の紹介でマリーは,出稼ぎにきている女性労働者のための下宿に住むことになりました。貧しい住まいだったことでしょう。しかし,大きな幸運がマリーを待っていました。下宿の前の道路の向かい側に,〈イーノック・プラット自由図書館〉という名前の市立図書館があったのです。

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