2010年5月21日金曜日

『千の風になって』という歌が私たちに届くまでの話・第12話

●映画館での出会い…幸せな結婚生活…
 新しい職場でマリーは,一人の男性と出会います。クラウド・フライという人です。彼もまた,貧しい家庭の人でした。しかも,数年前に流行したインフルエンザのために,妹や弟たちを失っていました。故郷バージニア州の貧しい家族を助けるために,小学校3年で学校をやめて,ボルチモアに働きに来ていました。ある大きな製鉄所で働いていました。彼もまた,ボルチモアで一人ぼっちだったのです。
 マリーが好きになったクラウドは,同じ映画を何回も見に来るようになりました。それで,不思議に思ったマリーが話しかけたことから,二人の交際が始まりました。似たような境遇の二人は,すぐに打ちとけ合い,結婚を考えるようになりました。そして,1930年8月マリー24歳,クラウド26歳の時に,クラウドの故郷バージニアで,結婚式をあげました。クラウドの親戚に囲まれただけのささやかな結婚式でした。〈イーノック・プラット自由図書館〉の司書さんを招待するというマリーの夢は,実現しませんでした。
 決して豊かとは言えない暮らしでしたが,それでも二人は,仲良く幸せにくらしていました。そんな幸せな暮らしの中で,ある日クラウドが,一軒の家の玄関の前の階段にたたずむ悲しそうなマーガレットに出会って,声をかけたという訳です。そしてそのことが,世界中の人から愛されるようになった詩『ザ・ポエムofマリー・E・フライ』の誕生へとつながっていくことになります。
 詩が誕生したのは,結婚から2年後の1932年,マリー26歳の時でした。

(第Ⅰ部終わり)

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