2010年5月11日火曜日

『千の風になって』という歌が私たちに届くまでの話・第6話

●マリー・E・フライの生い立ち
 マリーは,両親の名前を顔も知らない孤児でした。3歳の時,生まれた街の駅から汽車に乗せられ,車掌に預けられて,遠い親戚の家まで連れていかれたのです。しかしその親戚も縁の薄い親戚で,仕方なしにマリーを引き取ったのでした。おじさんのジョンは,まだマリーをかわいがってくれたのですが,奥さんのメイは,「血がつながっていない」ということで,マリーにきつくあったようです。
 4歳の時に,アメリカ中で国勢調査が行われました。しかしマリーは,その調査の時に家の奥に隠されました。マリーの存在を認めれば,いずれ養子にするしかないことを恐れたメイの意見が尊重されました。その結果マリーは,幼稚園にも,小学校にも行けなくなったのです。

 マリーをかわいそうに思ったジョンは,六歳半になったある日マリーにこんなことを言いました。

「お前のパパやママが誰だったのか,何が起こったのか。もう少し大きくなって物事がわかるようになったら,ちゃんとすべてを教えてあげよう」

 そして「私がお前に字を教えてあげよう」と付け加えました。他の子どもたちのように,勉強したくてたまらなかったマリーは,早く両親のことが知りたい気持ちもあって,一生懸命勉強しました。すぐに字が読めるようになったマリーのために,ジョンは近くの図書館で,ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』を借りてきてくれました。その本のとりこになったマリーは,繰り返しその本を読みました。

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