2010年5月11日火曜日

『千の風になって』という歌が私たちに届くまでの話・第4話

●新しい生活

 マリーに助けられたマーガレットの暮らしは,たのしいものでした。親切なマリー夫婦のおかげで,新しい仕事も見つかりました。優しいボーイフレンドもでき,マーガレットのアメリカでの新しい生活が始まりました。
 しかしそうなると,ドイツにおいてきた母親のことが気になります。心配するマーガレットを見かねたマリーは,マーガレットと一緒に,母親の様子を調べ始めます。ヒットラーに支配されたドイツは,混乱していました。母親の様子は,なかなか分かりません。困り果てたマリーたちは,休みの日には近くの港まで出かけて,ヨーロッパからやってくる人たちに,「だれかマーガレットのお母親さんのことを知りませんか?」と尋ねて歩いたりもしました。
 そんなある日,ドイツから一通の手紙が届きました。その手紙には,次にように書かれていました。

「問い合わせ人はすでに死亡していることが確認された。ドイツ政府」

 この知らせを聞いたマーガレットは,悲しみのあまり玄関の床に崩れ落ちました。その「悲しみ」と「寝たきりの母親をドイツに残してきたことに対する後悔の気持ち」は,計り知れないほど大きかったことでしょう。

0 件のコメント: