2010年5月11日火曜日

『千の風になって』という歌が私たちに届くまでの話・第9話

●〈イーノック・プラット自由図書館〉
 この図書館は,イーノック・プラットという人の寄付によってできた図書館です。イーノックさんも貧しい中努力を重ねて,新しい事業に成功した人でした。彼は成功をもたらしてくれたボルチモアへの感謝の気持ちを込めて,この図書館設立の資金を寄付しました。彼は図書館を作るにあたって,次のことを大事にしてほしいと訴えました。
 
「この図書館はすべての人に開かれている,貧し人にも,豊かな人にも。人種も肌の色も問われない」
                
 この言葉は,この図書館の一番大事な決まりとなりました。この言葉に基づいて運営されているこの図書館は,貧しくて身よりのないマリーに,どれだけの幸せな時間を提供してくれたことでしょう。しかも,
この図書館には親切な司書さんもいました。毎日夜になると図書館にやってくる12歳の孤児に,読書の相談にのってくれる人がいたのです。実現しなかったとはいえ,マリーは自分の結婚式に,「イーノック・プラット図書館のその司書さん」を招待したかったのですから。
 そんな司書さんがいたこの図書館は,マリーにとって,唯一の心休まる場所となりました。マリーは,その司書さんのアドバイスを受けながら,この図書館にある本をほとんど読みました。

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