2010年5月11日火曜日

『千の風になって』という歌が私たちに届くまでの話・第1話

【お願い】
 この話は,2010年2月に出版された井上文勝さん著『「千の風になって」紙袋に書かれた詩』(ポプラ社)を基に書かれています。井上さんの素晴らしい本の内容を,「学校の教材として子どもたちに伝えたい」という私の思いで,書き始めたものです。今現在井上さんの了解は取れていません。完成の暁には,きちんと井上さんのご了解がいただければと思っています。そういう事情ですので,この話の引用は,井上さんの了解がとれるまで,お控えください。

●ある女性のこと 

今から100年以上も前の,アメリカでの話です。アメリカにボルチモアという街があります。その街のある一軒の家の玄関の階段の所に,一人の女性が座っていました。エプロンをしているので,その家の「家政婦」のようです。とても悲しそうな顔をしています。その悲しそうな表情が,ある男の人の目にとまりました。男の人は,「こんにちは」と声をかけたのですが,それ以上は何も言えませんでした。男の人は,家に帰って奥さんにその女性のことを伝えました。話を聞いた奥さんは,心配のあまりすぐに,女性を訪ねることにしました。
 奥さんの名前を,マリー・E・フライといいます。実はマリー自身も,以前に同じ仕事をしていて,何度も悲しい思いをしたことがあったのです。マリーが女性を訪ねて声をかけると,女性は不安そうな表情を見せました。そこでマリーは女性を安心させるために,「さっきあなたに声をかけた男性は,私の夫ですよ」と説明しました。そのことを知った女性は,安心したようで,「何がそんなに悲しいのですか」というマリーの質問に,心を開いて話してくれるようになりました。

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