2010年6月2日水曜日

『2300年前に書かれた手紙』ーエピクロスからあなたへー

第56章 最初の文
「しかし,原子があらゆる大きさをもつと考えることは,現実にあるものの性質の違いを説明する助けにはならないよ。あらゆる大きさをもつを考えると,その原子が目に見えるほどの大きさになる場合があるからね。そんなことはありえないよ。原子が目に見えることがあるなって,考えることすらできないんだよ」

(コメント)
 歴史的に考えるとこの文は,とっても重要な文章です。「原子論」というアイデアを初めて出したのは,
レウキッポスとデモクリトスなのですが,彼らの考えた原子は目に見える大きさをもつものでした。エピクロスはそれを否定したわけです。同じ「原子」のイメージでも,その内容はまったく異なることになります。エピクロスの「原子」は,宇宙の無限や原子の数の無限とつながるイメージをもつものです。歴史的には,デモクリトスのアイデアを盗作したと非難されるエピクロスですが,同じ原子でも,その内容はまったく新しいものだったのです。「原子論におけるオリジナリティーを主張する」エピクロスを,私は支持したいと思います。

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