2010年6月9日水曜日

『千の風になって』という歌が私たちに届くまでの話・第20話

●すでに行われていた調査活動
 アメリカで,そしてイギリスで,「詩の作者は誰なのか」という問題が大きくなっていきました。しかし,実はその問題が大きくなるよりも7年前から,あるテレビ番組の中でマリーの詩が読まれたことをきっかけとして,作者探しは行われていました。しかもテレビ局の「詩の作者を探しています」という報道に対して,マリー自身が友だちに勧められて,「失礼とは思いますが,その詩は実は私が書いたものです」と名乗り出ていたのです。
 放送局は,「マリーの申し出が真偽かどうかの調査」を,リチャード・K・シュールという著名な記者に依頼しました。シュールは,数年間の調査の後,「マリーがこの詩の作者であることは間違いない」と確信しました。そして1983年6月に,詩の真の作者としてのマリーのインタビュー記事が発行されていたのでした。ただ「この詩の作者は誰なのか」という問題が,当時はそれほど多くの人々の関心をひかなかったために,シュールの記事自体が注目されなかったです。スペースシャトルの事故の後の追悼記事,そしてクミンスの遺書を通して,「詩の作者は誰か」ということが,アメリカでそしてイギリスで,大問題になっていったという訳です。
日本で出版された井上文勝著『「千の風になって」紙袋に書かれた詩』(ポプラ社)は,この問題に多くの人が納得できる回答を与えてくれる,世界で最も権威のある本だと言えるのです。英語に訳されて,世界の人々に読まれる日が待ち望まれます。

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