2010年6月7日月曜日

『千の風になって』という歌が私たちに届くまでの話・第17話

●地下水のように流れ続けたマリーの詩
しかし書き変えられた詩は,多くの人に支持されました。時代を超えて,多くの人たちが,愛する人の死に直面した時,マリーの詩を読み続けました。作者不明のまま,詩は読みつがれたのです。それはまるで大地の下を流れる地下水のように人々の心をとらえ,人から人へと語り継がれました。
 しかし,地下水はいつかどこかで地表に吹き出すものです。マリーの詩も,ついに地表に吹き出す時がきました。それは,1986年のことでした。詩が生まれてから,54年が立っていました。この年にアメリカで大きな事故が起こりました。1月28日,スペースシャトルが離陸直後に爆発し,乗組員7人が全員死亡しました。アメリカ中,いや世界中が悲しみに包まれました。
 この事故の後,アメリカのある著名なジャーナリストが,いくつかの新聞に,7人の死者の追悼のために,「作者不明の不朽の名作」として,マリーの詩を紹介しました。大きな反響がありました。感動の声とともに,「その詩の作者を知っています」「その詩の作者は私です」という投書が,多数寄せられました。これをきっかけとして,この詩の作者探しが始まりました。いち時期,「この詩はネイティブアメリカンの祈りの言葉である」と騒がれたこともありましたが,すぐにそうではないことが明らかになりました。

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